ハイキューパーツの公式ブログ「テクニカルガイド」

モデラーのための水転写式デカール印刷比較。プリンターごとの実例

水転写式デカールを自宅で印刷してみたい方向けに、印刷物の拡大写真を掲載しています。以下の例では、家庭用インクジェットプリンター(水性・顔料)とレーザープリンターの2つに大別されます。予算や設置場所、必要な色、目的に応じて最適な機種や方法は異なるため、選択の参考にしてください。紹介する方法や機種にはそれぞれ長所と短所があり、用途に応じた適切な選択が求められます。


社にある印刷機でのテストのため、少し古い機種もあります。ご了承ください。

環境

社内で印刷したものは、室温が約26度、湿度が約44%で、メーカー推奨の中間値付近で印刷しています。
参考:EPSON PX-S505 動作環境 温度:10~35℃ 湿度:20~80%

使用用紙

・レーザープリンター、UVインクジェットプリンターの場合は、弊社のクリアデカールTH ハガキサイズ(10枚入)

・インクジェットプリンター(水性・顔料)の場合は、弊社の家庭用インクジェットプリンターデカール用紙(透明ベース・A4サイズ5枚入)を使用。インクは純正インクを使用しています。

長所・短所

インクジェットプリンター(水性・顔料)と家庭用インクジェットプリンターデカール用紙を使う

長所
・色の発色がよく、中間色もきれい
・筐体が軽い
・省スペース
・一般に普及しているプリンター機種なので安価

短所
・クリアコーティングが手間
・クリアコーティングはエアブラシ塗装推奨。厚みはコーティングの腕に左右される

印刷表面のコーティングが必須です。水性インクのため、水に浸けて使用ができません。エアブラシなどの非接触の方法を使い、模型用ラッカークリアで薄くコーティングする作業が必須です。使用方法は商品に付属の説明書を熟読してください。

レーザープリンターとクリアデカールTHを使う

長所

・印刷の乾燥不要。クリアコーティングも不要でスピーディー
・K100、C100などトナー100%の色は得意。くっきり出せる(解像度が高い機種であれば顕著)
・機種によっては白印刷ができるトナーの販売あるRICOH SP SPC260SFL・C260L用 RICOH P C301用
 ※用紙限定のトナーです。定着が過度に強いため、クリアデカールTH以外に使うと内部に残留して不具合が出ます
・滲みが存在しないため、100%印刷時は印刷がくっきりとする
・貼付け後の保護用クリアコーティングで、模型用ラッカークリアが吹ける(比較的頑丈)

短所
・中間色とグラデーションが苦手。CMYKのトナーを使って網点で印刷されるため、解像度が低い機種は網点が顕著
・筐体が大きい
・解像度が高いものは高価
・場合によってはトラッキングコードが目立つ

UVインクジェットプリンターとクリアデカールTHを使う場合

UVインクジェットプリンター(紫外線(UV)硬化型インクジェットインク)は、一部の樹脂・素材を除き、印刷後に硬化・定着が可能であるため、クリアデカールTHにも印刷が可能です。ただし、「印刷ができる」というだけで、模型用として販売・使用するには課題が多いため、弊社では推奨しておりません。

イベントやキット付属品として、印刷されたものを販売される場合、購入者が困らないように、使用するインクに適した保護用クリア塗料(水性クリア・低溶剤・低攻撃性のタイプなど)のご案内をお願いいたします。なお、いわゆる模型用ラッカークリア塗料は適しておりません。この点については、別の記事で詳しくご紹介いたします。


実写見本 カラー印刷テスト

印刷した画像は4,000px x 4,000pxあります。拡大して見たい方はダウンロードするか、新しいウインドウやタブで画像を開いてください。

今回使用したデザインは、Adobe Stockの素材(アセットID:361226094)を縮小加工したものです。


EPSON PX-S505
(水性顔料インクジェットプリンター)
印刷・乾燥後にエアブラシでGSIクレオススーパークリアIIIをコーティング済
下地の白を印刷していない(白インク搭載機ではないため)、白い部分に貼り付ける用途です。


富士フイルム(Fujifilm)ApeosPort-Ⅶ C3322
(レーザープリンター)
※旧ゼロックス
トラッキングコード(黄色く四角い点)が目立ちます。

トラッキングコードの例

 正式名称不明。セキュリティーコード、偽造防止コードと呼ぶサービスマンもいます。レーザープリンターでの紙幣偽造防止のために設けられたものですが、レーザープリンターであればドットの大小はありますが、印刷されます。
 印刷後に貼り付ける面が黄色、赤、黒の場合ほぼ目立たなくなりますが、白、透明の場合、顕著に見えます。
 柄に沿って切って使う場合はトラッキングコードが印刷された部分を使用しないために、見えなくなりますが、中マド、袋文字などの柄では、透明部にトラッキングコードが残りますので注意が必要です。


OKI MICROLINE VINCI C941dn
(レーザープリンター)
目立たないが小さなトラッキングコードが入ります。


RolandDG LEF-2-200
(UVインクジェットプリンター)
下地に白を印刷しています
※上にクリアを吹きたい場合は、水性に限ります。いわゆる模型用ラッカークリアは使用不可。別記事で紹介します


弊社印刷部門「ハイキュープリント」での印刷
下地に白を印刷しています

実写見本 黒単色印刷

印刷した画像は4,000px x 4,000pxあります。拡大して見たい方はダウンロードするか、新しいウインドウやタブで画像を開いてください。

黒はリッチブラック指定(C60 M60 Y60 K100で濃い目ですが、弊社印刷機に準拠)で印刷しています。印刷時のリッピング処理でK100に置き換えられている場合もあります、ご注意ください。レーザープリンター使用時でも単色印刷の場合は、トラッキングコードは印刷されません。

今回使用したデザインは、LGMデカール2 ブラック(1枚入)の右下部分です。同じアートファイルを使い、縮尺はそのままです。


LGMデカール2 ブラック(1枚入)の右下部分です。
比較用:シルクスクリーン印刷。細かな文字の印刷が苦手な方式ですが、最小印刷可能値に合わせてデザインしているので潰れが最小限です。黒単色。


EPSON PX-S505
(水性顔料インクジェットプリンター)
印刷・乾燥後にエアブラシでGSIクレオススーパークリアIIIをコーティング済
下地の白を印刷していない(白搭載機ではないため)、白い部分に貼り付ける用途です。


富士フイルム(Fujifilm)ApeosPort-Ⅶ C3322
(レーザープリンター)
※旧ゼロックス
単色に処理されています。単色ではトラッキングコードは出ません


OKI MICROLINE VINCI C941dn
(レーザープリンター)
単色に処理されています。単色ではトラッキングコードは出ません


RolandDG LEF-2-200
(UVインクジェットプリンター)
※上にクリアを吹きたい場合は、水性に限ります。いわゆる模型用ラッカークリアは使用不可。別記事で紹介します


弊社印刷部門「ハイキュープリント」での印刷