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デカールの段差消し「瞳デカール編」

正攻法でもっと手間をかければ、段差は完全に消し去ることもできるのですが、なるべく手間がかからず、ステップアップ的にチャレンジしやすい方法を紹介していきます。

今回は「瞳デカール」編。弊社でシリーズではカスタムアイデカール、コトブキヤ「フレームアームズ・ガール」では付属のデカールを使って紹介していきます。

そもそも段差はなぜできるのか?

弊社で扱っているデカールは、水転写式スライドマークに分類されるものですが、ドライデカール(感圧転写式シール・インスタントレタリング)であっても、インクの層だけは段差が生じます。今回は水転写式デカール(以下デカール)に絞っての紹介です。

上の図はデカールを貼り付けた時の断面図です。紫色は柄(インク)と思ってください。一般的なデカールが指すのは、シルクスクリーン印刷やオフセット印刷、またはそれらのハイブリッド印刷。いずれもインク層を保護する目的や、グループする目的でインクの上に透明なインクが載せてあります。
弊社受託印刷サービスやカスタムアイデカールに使用している「SIJ印刷」にも透明層がありますが、インクの保護が目的ではなく、インクの下層にあるインク受理層としての目的です。また、柄をグループする目的も同時に担っています。

いずれにしても物理的にインクが乗っているわけなので、段差は生じます。それをなだらかにしていくのが段差消しの目的です。SIJ印刷の場合は図で分かる通り、ほぼ垂直に透明層がカットされていますので、一般的なデカールよりフチが目立ちやすい構造です。
段差を完全に消し去るには、現在透明層が乗っていないところも、その物質と同じ高さまで透明層を追加してやればいいのですが、全体に載せなくてもなだらかになれば見た目には段差が目立ちにくくなります。

フレッシュパーツ(主につや消し)の上に貼った瞳デカール用(カスタムアイデカール)の工法と、メカモノなどのデカールの段差消しのやり方が違いますので、まずは瞳デカール編ということで紹介していきます。

↓透明層に透明層を重ねて断面をなだらかにしていく図説

難しいことを書きましたがアクリジョンを薄めて塗るだけです

まずは綺麗に貼れないと進みませんので貼り方の基本的なところのおさらいです。

今回用意しましたのは、コトブキヤ『フレームアームズ・ガール「迅雷」』(顔パーツは轟雷と共通です)+キット付属のデカール、弊社カスタムアイデカール10Aです。目のサイズは100%のものを使いました。

アイプリントを落とすのにはクレオス「エアブラシ専用うすめ液(シンナー)」を使いました。昔のプリント済みキットの中には、模型用シンナーでペイントが落ちないこともあったのですが(グレンラガンの頃)、今回はこれで落ちました。ペイントリムーバー系でもいいのですが、長時間浸すのは厳禁です。樹脂が変質するものもあります。

綿棒をシンナーで湿らせて少しずつ剥がしていきました。


塗装を落とし終えたら、キムワイプなどに含ませて表面の汚れや油脂を拭き取ります。

水を含ませたキムワイプの上に切り出したデカールを起きました。台紙に水が染み込み、台紙から剥離するまで待ちます。

カスタムアイデカールの方はSIJ印刷です。周囲に透明層(受理層)があるので先に取り除きました。

各々の経験則からやり方が多数あると思いますが、あとはいつものデカール貼りと同じ手順です。夏場はデカールが柔らかくなりやすいため、貼り付けたい箇所にマークセッターをごく少量載せた上で、筆で混合液を伸ばし、その上にデカールを置きました。水を含ませた柔らかめので密着させていきます。

表面に薄めたマークセッターを塗って放置します。
ある程度時間を置いてデカールが貼り付いてからガイアノーツ「フィニッシュマスター」に水を含ませてから圧着させます。デカールが貼り付いてからでないと、フィニッシュマスターのほうにデカールがくっつきます。デカールとパーツの間に空気や水が残らないように注意。

キット付属のデカールの方も同じ容量です。

薄めたつや消しクリアーを塗ります



クレオス「アクリジョン つや消しクリアー」をよくかき混ぜて、専用薄め液と1:1の割合で混ぜます。エアブラシ用ではなくスタンダードな方です。あまり量を作っても使いませんので小指程度の大きさずつでOKです。濃すぎると筆目が目立ちますので、薄いほうが良いです。

混合液は2回塗布します。1回めは赤矢印の箇所(デカールのフチ ※崖に相当する箇所)。2回めは赤矢印を含む全体に薄く塗ります。

イメージ図ですが、↑をイメージして2回目は薄く塗り重ねます。

が、うまく写真に写らないぞ


右目が塗布。左目は未塗布。よくわからないと思いますが、肉眼で動かして見ると段差が目立ちにくくなっています。よくわからないと思います。

アクリジョン「つや消しクリアー」は乾燥にかなり時間がかかるようで、夏場で1日乾燥させました。完全に乾燥すると途中乾燥時よりも、ツヤがもっと落ちます。塗った直後に途中乾いたように見えますが、不用意に触らないように。

両目とも塗布して完全乾燥

唇の色は、ガンダムマーカー「リアルタッチマーカー リアルタッチレッド1」を使って入れました。


瞳デカールの段差消しは、「下地がつや消し」「仕上げ目標がつや消し」という環境でのみ使える方法でした。

次回はメカモノというか、目立たないようにしたいデカール箇所が多く、下地が「つや消し」でない場合の段差が目立たない工作を紹介予定です。

FRAME ARMS GIRL:Ⓒ KOTOBUKIYA