ハイキューパーツの公式ブログ「テクニカルガイド」

家庭用インクジェットプリンターデカール用紙の使い方

株式会社ハイキューパーツ(以下弊社)から発売されている、家庭用インクジェットプリンターデカール用紙(型番INKJ-T04CL、 INKJ-T05WB)の使い方を紹介します。

レーザープリンターで作る水転写式デカール記事はこちら

弊社の家庭用インクジェットプリンターデカール用紙には、

家庭用インクジェットプリンターデカール用紙(透明ベース・A4サイズ5枚入)

家庭用インクジェットプリンターデカール用紙(白ベース・A4サイズ5枚入)

があります。使い分けは後述します。

基本的な設定は、同梱の説明書に記載されていますので本記事は補足です。印刷後のコーティング、貼り付け、剥がれ防止のコーティング、研ぎ出しまでを紹介しています。

※弊社のクリアデカールTH(型番CLDTH、CLDTH-B5)はレーザープリンター用のため使い方が異なります。

説明書の補足

対応インク

○ 顔料インク推奨

全色顔料インク搭載の家庭用インクジェットプリンター推奨。顔料インクでの印刷に適した水転写式デカール作成用の用紙です。試験機は顔料4色機です。搭載色数が増えると印刷の品質が良くなりますが、顔料インクである必要があります。

△ 染料インク非推奨

染料インクは、用紙がインクを弾いて定着しないことがあります。顔料インクに比べて解像感が落ち、耐候性の懸念のため推奨しません。環境によりますが、一般的には顔料に比べて色褪せがあり、耐候性が落ちます。

※2018年8月発売当初の検証では染料インクも対象として印刷ができておりましたが、2023年8月の検証では、染料インクの中でも定着しないものが市場に出てきまして、使用可否の判別ができないことから、染料インクは一律で非推奨にしました。染料インクを使用したい場合は、純正か互換インクかを問わず、定着のばらつきがありますので、試験の上でご利用ください。

推奨プリンター・PCの設定画面

EPSON PX-S505 (顔料4色機)※純正インク使用時 室温26℃ 検証日2023/8/7
・用紙種類 写真用紙
・印刷品質 品質優先 レベル4 ※MacOSの場合は、高精細を選択

OS Windows


Windows10

Windows10

OS MacOSX

macOS Big Sur
macOS Big Sur

印刷可能範囲

印刷可能範囲は、紙と機械が干渉して、機械に未硬化のインクが付着することから定めています。機種によっては印刷可能範囲がもっと広い場合もありますが、検証機(EPSON PX-S505 )で安定して印刷できる範囲を指しています。範囲を超えて印刷する場合は、試験の上でご利用ください。紙の四隅や、端面がインクで汚れる場合は不適で、推奨しません。

印刷範囲 上部左右に3mmの余白、下部に40mmの余白

印刷と印刷保護のコーティング

工程にはクリアコーティングが2回出てきますが、1回目は印刷の保護のためのコーティング。2回目は剥がれ防止・ツヤ調整のためのコーティングです。

下の写真は、 白ベース(INKJ-T05WB)の用紙に印刷したものです。印刷をよく乾燥させた後に、エアブラシを使ってクリアコーティングをしています。缶スプレーなどでもクリアコーティングができますが、一度に吹き付けすぎると溶けることがあるため、一気に吹き付けないように注意が必要です。

使用塗料:ガイアカラー EXクリアー

コーティングが必要な理由

使用するインクジェットプリンターのインクは水溶性です。そのため、このクリアコーティングをしないと水につけたときに分解してしまいます。漏れがないように全体に均一に吹き付けてください。

※レーザープリンター用デカール用紙(CLDTHなど)+トナーの場合は、非水溶性のためコーティングが必要ないので作業が早い特長があります。

ハサミまたはカッターで切り出します。表面に定規が触れないほうが良いのでハサミのほうが適しています。下の画像では予め四角に切り出せるように簡易のトンボを設けています。

貼り付けます

つや消し塗装の表面に貼ると細かな気泡が入ってしまうため、必ずグロス(つやあり)面に貼ります。皮脂や埃などが着いている場合は、洗浄してから貼り付けます。

水を含ませたキムワイプ(ほか繊維の出ない布など)の上に乗せて、台紙からデカールがスライドできるようになるのを待ってから、貼付け作業を開始します。

一般的な水転写式デカールに比べて、印刷表面の強度が低いので、水に濡らした筆などを使ってスライドさせます。

乾燥させた後に、剥がれ防止・ツヤ調整のためのコーティングを行います。缶スプレーなどでもクリアコーティングができますが、一度に吹き付けすぎると溶けることがあるため、一気に吹き付けないように注意が必要です。

乱暴に扱うと

水転写式デカール自体がもともと扱いに注意が必要なものですが、家庭用インクジェットプリンターデカール用紙で自作するデカールはさらにデリケートです。乱暴に扱ったり、移動を繰り返す、水の含浸が不十分で剥離時に引っかかる、水の含浸のし過ぎで印刷が剥離するなどがおきますので、使用には修練が必要です。

透明ベース、白ベースの使い分け

弊社の家庭用インクジェットプリンターデカール用紙には、

家庭用インクジェットプリンターデカール用紙(透明ベース・A4サイズ5枚入)

家庭用インクジェットプリンターデカール用紙(白ベース・A4サイズ5枚入)

の2種類があります。透明ベースは、透明な素材ですのでサランラップに印刷しているようなイメージです。白ベースは、紙に印刷しているような状態です。

用途別使い分け

白い塗装面に貼る → 透明ベース

淡い色の塗装面に貼る → 透明ベース(ただし、透け気味)

白以外(赤など)の塗装面に貼る → 白ベース(ただし、切り出した形のまま)

透明素材に貼って透過させたい → 透明ベース

で使い分けます。同じデータを使用して作ったデカールを貼り付けた例を以下に紹介します。

白いカーモデルにイラストを印刷したデカールを貼りたいという場合は、透明ベースがベストです。逆に、赤いカーモデルにイラストを印刷してデカールを貼る場合は、予め切り出したい形も一緒に印刷しておいてハサミなどで丁寧に切り抜くと使用できないこともないです。

※家庭用インクジェットプリンター(水性)は基本的には白などの紙に印刷するものなので白いインクは搭載されていません

研ぎ出しまでできます

貼り付けの段差を平滑にして、つやありに仕上げました。

  • クリア砂吹き2回、ウェット5回
  • 1000番で研磨
  • 砂吹き1回、ウェット4回
  • 1000で研磨
  • ウェット3回

最後はコンパウンドを掛けずに吹きっぱなしでウェット(濡れ肌)で吹き付けています。

使用塗料:ガイアカラー EXクリアー

余録:有機溶剤入りの添加剤

デカールの軟化剤テスト結果です(注:デカールの扱いに慣れた習熟者のレポートです)。家庭用インクジェットプリンターデカール用紙はもともと素材が柔らかいものですので、必要なければ使用しないでください。

白にマークソフター問題なし
白にマークセッター問題なし

透明にマークソフター問題なし
透明にマークセッター問題なし

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