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2022年版 水転写式デカールの使い方 応用編 シルバリングの修正

この記事内で「デカール」の定義と基本的な使い方については別記事を参照してください。重複する部分は省略します。

注意:模型用ラッカー塗料の上にデカールを貼り付ける環境で解説をしています。模型用のデカール添加剤であっても水性塗料の塗装を溶かすものもありますので、目立たない場所でテストしてから使用して下さい。


デカールフィクサーは溶剤を含みませんが、水性塗料であっても完全乾燥前や、乾燥後にもで溶け出す塗料の場合は使用に不向きです。通常、模型用の水性塗料は完全乾燥後は水に溶けません。


シルバリングって何?

一般的には「密着不良による空気の噛み込みによる白化現象」を指します。この記事では「空気の噛み込み」を治す方法を紹介します。ちなみに、印刷業界でもラミネート加工不良で小さな空気を噛んだ状態をシルバリングと呼びます。

ですが、模型趣味のジャンルでは「空気の噛み込み」以外に、「溶剤を含む添加剤によって塗装面自体がが白くなってしまう現象」についてもシルバリングと呼ぶことがあります(適切な呼び方がないため)。

この溶剤による色変化の現象は、デカール貼り付け面にクリア層を一層塗装してクッションにすることで概ね防げました。また、塗装面の乾燥不足などの原因が考えられます。デカールを貼ったところだけちょっと白くなっている現象はこのせいです。

赤矢印部分の白化は「溶剤を含む添加剤によって塗装面自体がが白くなってしまう現象」。古い画像なのでサイズが小さいです。ご容赦ください。

シルバリングってこんな状態

ザラザラのつや消し塗装面に、水になんどもつけて糊をなくした状態のデカールを貼るとシルバリングを再現できます。下層に空気が噛んでいるので、この上にクリア塗装をいくら重ねたところで、構造上(記事後半に構造図があります)気泡が抜けてきれいにならないのは自明です。

シルバリングしているかどうかチェックするには水筆

クリアを吹いたあとに修正するのは面倒なので、貼ったあとにチェックするのが適切です。

デカールの上に水を塗ると、気泡が見えやすくなりチェックしやすくなります。水をクリア塗装に見立てて塗る考えです。見る角度を変えると気泡が見えやすいです。

塗装とデカールの種類によっては、水を撥水して、水を弾いてしまいます。その場合は、界面活性剤(中性洗剤を薄めたものが適切)を少し足すと、弾かなくなります。デカールフィクサーでもチェックが可能です。いずれも、不要な液は拭き取りが必要です。

かなり気泡が残っているのがわかります。

補修開始

補修作業は、デカールと貼り付け対象物の間に糊を流し込む作業です。とても手間がかかるので、デカールを貼り付ける場所だけでもツヤを持たせておくと作業が不要になります。

画像ではラッカー塗料の塗装面のため、マークセッターを使っていますが、水性塗料の場合は先にテストをしましょう。気泡があるデカールの上に液を乗せます。

新品のデザインナイフの刃で、デカールに切れ目を作り、間に流し込みます。慣れないうちは1:1程度に薄めて使うほうが良いです。過度に柔らかくなると切り込み自体が入れられなくなります。

ツンツンして切込みを入れ、気泡が消えるまで同じ作業を繰り返します。

補修完了

チェックのために水を乗せました。右が補修完了後。左が未補修のものです。

シルバリングを防ぐための見直しポイント

  • 貼付ける面がガサガサしていないか → 貼る面をグロスに近づける
  • デカールの初期接着を待たずに、糊と水分を追い出していないか → ちょっと待つ
  • デカールが劣化、または水につけすぎて糊が不足していないか → 糊添加 デカールフィクサー or マークセッター(ラッカー併用推奨)

追記:初期接着は、指(筆)でいじっても動かなくなる状態くらいです。貼付け面にひっつく力と、スポンジにひっつく力が逆転すると、スポンジにひっつきます。