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レーザープリンターで印刷したデカールの印刷比較

デカールの良し悪しは印刷品質よりももっと大事な「サイズが合うか」「ちゃんと貼れるか」「分割は適正か」の部分が多く、とにかく試作の回数と検証の正確さが大事です。その点でクリアデカールTHとレーザープリンターは、乾燥時間が不要なので試験と検証に向いています。

一方のインクジェットプリンター用デカール用紙のデカールは、インクの乾燥時間と印刷のコーティングの手間がかかるのでスピード感にかけます。が、グラデーションを生かした印刷が得意なのと、セキュリティーコードの問題がないのが利点で、瞳などの細かな印刷に向いています。

用紙

本エントリーでは、弊社で販売しているレーザープリンター用の自作用デカール用紙(クリアデカールTH)を使用しています。家庭用インクジェットプリンター(水性・顔料)を利用しての作成例は別のエントリーで紹介しています。

白が印刷できる2機種の比較

印刷機は、小型ローエンド機のRICOH SP C260L(以下、C260L)。家庭に置けるハイエンド機としてOKI MICROLINE VINCI C941dn(以下、C941dn)を紹介します。

C260Lでも23.8kg。941dnは90kg近くあるので、床の耐荷重確認が必要です。

弊社ではC260L用に、K(黒)トナーと入れ替えて白を印刷できるトナーを扱っています。この蛍光白トナーは定着が良すぎるので、普通の紙に印刷するのには向かないのですが、クリアデカールTHとは相性が良く(THは定着が良い)、白の濃度も高いので、用途を限定することで生産所より供給を受けています。

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一方でC941dnは印刷業界に向けて作られたもので、透明パッケージの試作用途のために、白トナー(クリアトナーもあり)を搭載することができます。純正品の上、ほかの用紙やPETシートなどにも印刷ができます。

C941dnは下地に白が刷れそうだけれども

C941dnの仕様を見ると、下地に白を印刷してその上にカラーを印刷できるように見えますが、トナーの順番が希望とは逆で、デカール印刷のように下に白を印刷することができません。用紙を2度刷り(機械内で自動回転)することができますが、見当(印刷位置)が合わないので、白全面を印刷した上に柄などの用途向けで、細かな柄には向かず模型用途には厳しいです。

※PETシートに印刷する場合、PETの上にカラー→白と印刷しますが、最終的に表面に来るのはPET面です。そのため、白を後で印刷できる並びになっているようです

レーザープリンターが苦手なベタとグラデーション

レーザープリンターは書類印刷に適したもので、文字のくっきり感などが得意な方式です。またインクジェットプリンターで印刷したデカールのように乾燥時間が要らないので、スピーディーに作業を進めたい場合に適しています。

まず、苦手なのは、微細なグラデーションです。CMY(時々K)のトナーを使って色を表現するため、インクジェットプリンターのようにグラデーションは綺麗に印刷されません。

次に、ベタが苦手です。模型をされる方に馴染みがあるのは、シルクスクリーン印刷のデカールと思いますが、発色が良い=ベタが均一というのもシルクスクリーン印刷の特長にあります。粉(トナー)を均一には印刷できないので、どうしてもモヤがかかったように薄いところや濃いところがでます。

難敵セキュリティーコード

世のいずれのレーザープリンターも同じですが(少なくとも国内メーカーは)、紙幣などの偽造防止のために印刷機を特定するためのコードが印刷されます(名称不明のためセキュリティーコードと呼称します)。確認した範囲では、Yトナーを使用して、用紙全体に小さな黄色い点がまばらに印刷されます。一般的な紙で印刷を見る程度では目立ちませんが、透明な用紙に印刷し、さらに拡大して写真を撮った場合、結構目立ちます。つまりカーモデルなどでは顕著に見えます。

拡大写真を撮らない、または試作用途での利用であれば問題ないです。

ただし、セキュリティーコードが印刷されるのは、カラー印刷のときのみです。単色印刷(モノクロモード)や白だけで印刷した場合は印刷されないので、単色であればセキュリティーコードは印刷されません。

印刷に使用したデータ

レーザープリンターが苦手なグラデーションカラーの意地悪な柄を用意しました。黒い柄は、白印刷用です。C260LではKを白に物理的に置き換えるためKで指定した部分は白で印刷されます。C941dnではスウォッチ(OKIが提供するスウォッチ)で色を指定します。

白比較

C260L。ベタが苦手です。
C941dn。同じくベタが苦手です。C260Lより解像感が良い。

カラー印刷比較

C260L。60cmくらい離れて見る分には問題なし
C941dn。30cmくらい離れて見る分には問題なし
C941dn。赤いスプーンに貼りました。下地の白を入れられないので透けます。

研ぎ出し

C941dnで印刷したデカールを、クリアコーティングで平滑な状態まで作業します(いわゆる研ぎ出し)。インクジェットプリンター用デカール用紙で作ったデカールより、レーザープリンターで印刷したデカールのほうが耐候性が高く(顔料なので)、頑丈で、研ぎ出し仕上げにも向いています。

上のが貼りっぱなしの状態。よく乾燥させてからEXクリア3回、800~1000番研ぎ。

EXクリア2回、800~1000番研ぎ、EXクリア2回までしました。